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shinoのときどき日記


2012年12月05日(Wed)

『エベレストから百名山へ ヒマラヤから教わったこと』重廣恒夫 著

エベレストから百名山へ (光文社新書)(重廣 恒夫)

重廣恒夫さんである。本書は主に1970年から90年代のヒマラヤやカラコルムでの海外遠征登山がメインで、タイトルの百名山の章は最後の一章だけだ。海外遠征目当ての人は安心して読んで良い本だし、逆に百名山が目当ての方は肩すかしをくらうかもしれない。

わたしが初めて重廣さんのお名前を知ったのは、『初代 竹内洋岳』で、1995年、竹内さんが初めて登った8000m峰、マカルー遠征の隊長だったという話だ。そこでは重廣イズムという言葉が用いられ、徹底した戦略(タクティクス)でたくさんのポーターやシェルパを雇い、荷揚げを行い、登山する極地法の重鎮としてお名前が出ていたように記憶している。ちなみに、竹内さんはこの時、先発隊として道無き道(当時は今のようにGoogleMapsはなかった)でルートを探索し突き進むのは本当の冒険で楽しかったと、どこかのインタビューか何かで懐古されているのを見かけたことがある。

わたしは重廣恒夫さんは極地法オンリーの方かと思っていたのだけれど、この本を読んでみたら、時代の変遷とともに、極地法からアルパインスタイルから百名山連続123日登頂(1996年)までこなしていて、とても幅広い登山をされていることがわかった。特に、重廣さんの登山哲学には、山頂に至る未踏のルートを発見して自分で登っていく、冒険のようなものが絶対重要なのだということがわかった。

また、わたしはこの本を読むまで知らなかったのだけど、日本人のK2初登頂者が重廣恒夫さんだった。その時、1977年のK2初登頂には伝説の登山家、森田勝氏の下山事件があったという。また、1980年の重廣隊によるチョモランマ北壁世界初登攀時には、森田勝氏の最後に使われていたアイスバイルによって命を救われたりと、冒険活劇のようなエピソードもある。

この本では、第二次RCC系の登山家が数多く名前を連ね、硬派な登山家・登攀の系譜のようだった。Wikipediaを確認したがこの本のすべての登攀が掲載されていなかったので、目次にあげられている重廣恒夫さんが参加し、登攀や隊長を行ったものを時系列順にここに記しておく。

  • 1973 エベレスト南壁 第二次RCC隊エベレスト遠征
  • 1976 ナンダデヴィ 世界初、七千メートル峰の縦走
  • 1977 K2 日本人として初登頂
  • 1979 未踏峰ラトックⅠ峰(垂直の壁)
  • 1980 チョモランマ北壁、世界初登攀
  • 1984 カンチェンジュンガ縦走
  • 1985 未踏マッシャブルム北面とブロードピーク連続登攀
    • ブロードピークBCでポーランド隊のワンダやフランスのバーラル夫妻(1986 K2遭難)が一緒だった
  • 1988 チョモランマ/サガルマタ交差縦走(衛星中継有り、登頂日が決められたタクティクス)
    • 山田昇氏が一緒
  • 1991,92 ナムチャバルワ(ツァンポー河そば)
  • 1995 マカルー東綾(未踏の稜線を辿る)
    • 若手隊員に竹内洋岳氏がいた
  • 1996 日本百名山123日連続登頂
    • 企画名「山頂で会いませんか」ホームページで山行情報を公開
    • 利尻島で阿部幹雄氏の同行取材あり

新書という一般向けの書物ながら、8000m峰のあるヒマラヤおよびカラコルム山脈の概略地図や、各登山のルート概略図が丁寧に載せられているし、極地法やアルパインスタイルについてもエキスパートの視点からわかりやすく説明があるので、これからエベレストものや超高所登山の書籍に手を出そうと思う人には、入門書として良い本だと思った。

ただし、百名山については、もし実際に素人が重廣さんの真似をしたら途中で死んでしまうと思うので注意。(←返せばそんな滅多なことはヒマラヤエキスパートでないとできないという誉め言葉です。念のため)

エベレストから百名山へ (光文社新書)
重廣 恒夫
光文社
¥ 861

Tags: 読書

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