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能登の森から届いた一息 〜2024年のふりかえり〜

2024年の幕開けは、能登半島を襲った震度7の大地震でした。SNSで情報を追う中、目に飛び込んできたのは、かつて銀座のギャラリーバーで出会った澄子さんの名前。能登に暮らす造形作家である彼女。その作品と人柄は、都会の喧騒を忘れさせるような、森の息吹を感じさせるものでした。ギャラリーバーはすでに姿を消しましたが、澄子さんとの会話の記憶は、今も心の中で鮮やかによみがえります。

地震後、SNSで偶然目にした投稿から、澄子さんのご主人であるお坊さんが川崎で托鉢(たくはつ)を行っていることを知りました。その投稿には、緊急支援用として口座情報が記されていました。澄子さんのことが思い浮かび、「私にできることは何か」と祈り、ささやかながら支援を始めることに決めました。「スミコサンヘ」と送信者名を記し、少額ずつ毎月振り込む日々を続けました。

半年が過ぎた6月ごろ、「そろそろ支援をやめてもいいのでは」と思う自分がいました。しかし、能登の復興が道半ばであると知るたびに、「もう少しだけ続けよう」と心が動かされました。不思議です。「どうしようかな」と思うと、さまざまな方法で神さまがまだまだ能登には支援が必要なことを私に教えてくださいました。そうして小さな決意を積み重ねた結果、一年間支援を続けることができたのです。

9月、石川県の郵便局から「個人情報開示請求」が届き、驚きました。「スミコさんへ」という送信者名は、先方からみたら匿名だったのです。そして、聖書のマタイによる福音書6章3〜4節にある「右手が良いことをしても左手に知らせるな」という教えに私は従えていないのかもしれない、と自問しました。「このまま匿名でもいいのでは?」とも思いました。一方で、受け取る側が謎の送金に不安を抱いている可能性を考え、思い切って澄子さんに連絡を取ることにしました。「スミコサンヘ」の謎の振り込み主が私であることを伝えると、すぐにお返事をいただきました。それだけでなく、お住まいの集落からのお便りも送ってくださり、お便りに並ぶ力強く温かな言葉に深く心を打たれました。

2011年、東日本大震災を横浜で経験した私には、逃げ場のない閉塞感に苦しんだ記憶があります。その記憶が、今回の出来事を通じて鮮明に思い出されました。それでも、この小さなつながりが私の心に安らぎを与え、感謝を深める時間をもたらしてくれたのです。

2024年は、全体として灰色がかった記憶が多い一年だったかもしれません。しかし、その中で澄子さんとの交流は、能登の深い森や土の香り、空気を私のもとに運び、小さな穴から差し込む命の息吹のような輝きを届けてくれました。

2025年がどのような年になるかは分かりません。それでも、今回のつながりを大切にし、また家庭や仕事、そして身近な人々との関係を深めながら歩んでいきたいと思います。どんなに自分ではどうしようもないことが起きたとしても、天を仰ぎ、祈りをささげる時が与えられるように願っています。そして、もし祈ることさえ難しいと感じる瞬間があれば、誰かがきっとあなたのために祈っていることを思い出してください。その祈りが希望の光となり、暗闇を照らしてくれることでしょう。

すべてを導き、新しい息吹を私の心に吹き込んでくださる神さまに感謝します。このふりかえりが、皆さんの心にもささやかな灯火をともす助けとなり、このクリスマスの時期に少しでも希望と平安を感じていただけたら幸いです。

この post は 2024 Advent Calendar 2024 3日目の記事として書かれました。
明日の第4日目は tsumakazuさんです。お楽しみに。