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ベスト・オブ・2023 a.k.a. よかったさがし2023

昔はこのクリスマスを待ち望む時期、結城浩さんの「よかったさがしリース」に参加させてもらっていたのですが、リースがなくなり幾年月。しかし年々、一般の人に「アドベントカレンダー」という風習が広がり、お題に従っていろいろな人が手をつなぎながらこの季節を過ごすようになりました。すばらしいですね。

今年は、tumblrでお友達になったtaizoooさんがつくられるアドベントカレンダー「ベスト・オブ・2023」( https://adventar.org/calendars/9039 )に参加します。昨日、2023/12/23はまとさん(すみません、このシステム古すぎて、絵文字が使えませんでした……)、明日、2023/12/25はrealfineloveさんです。

インターネットとは1990年代後半からの付き合いですが、ぜんぜん飽きなくて、まだインターネットの大海を漂っていられるのが2023年のよかったことかと思います。このWikiはひとりWikiで、2000年から使い始めていますが、2019年からじつはとあるアプリのボランティア・ローカライズチーム、数十名所帯でWikiを使っています。Wikiを使っています。(だいじなことなので二回言いました。) 2023年、気がつけば5年、その非公開のWikiを使って世界中(に住んでいる日本語を心の言葉とする)人びととコラボレーションをしています。そんな活動を今年もインターネットで続けられたのが、本当によかったな、感謝だなと思うことです。

これまで、インターネットにはいくつか大きな地殻変動的イベントがあったと思います。

1995年、Windows 95が出てきて、1998年、インターネットブラウザーをデフォルトで搭載したWindows 98が出てきました。世界中の人がインターネットでつながる! という大航海時代の幕開けの空気を、今でも覚えています。

日常生活ではとても出会えないような人とも出会いました。1998年から2000年ごろ、当時は、インターネットに日記を公開する文化があって、菜摘ひかるさんという女性に出会ったのは私には忘れがたいことです。彼女は、一緒に歩いた新宿の街中、赤信号でふっと立ち止まったときに、私に向かって「もしかして牧師さまですか?」と言われました。残念ながら私はそのような献身には招かれていませんが、やわらかなうさぎの毛皮を着込んだ彼女に、イエス・キリストの系図を語り、その中で神さまに用いられた女性たちのことをお伝えしたからかもしれません。

また、次の大きな変化は2001年にありました。Wikiという誰かが書いた文章をほかの人が書き換えられるシステムに出会ったことです。インターネットを通じて「Wikiとは何ぞや?」と大いに盛り上がりました。誰かと何かをするためのツールだということはわかったのですが、まだでも当時は、「何を」するのかはわかっていませんでした。

そして、2008年、びっくりするようなデバイスが出てきましたね。iPhoneです。それまでもカメラがついたモバイルデバイスなどを一部のデジタルガジェット好きな人がいろいろなモジュールをつなぎあわせて作ったりしていましたが、iPhoneとiPod touchは、それがデフォルトでついているのです。しかも、動画まで撮れる。撮って、すぐウェブに公開できる。衝撃でした。あのとき、インターネットは大きな時代の曲がり角を曲がり切ったのだ、もう「個人が匿名でウェブを漂う時代」には戻れないのだと、何かぞっとするような、時代が幕を切ったような、そんな気持ちになりました。その2008年のiPhoneの、最初の無料アプリ200の中に、聖書を読むためのアプリもありました。

いろいろなものが、すごい勢いでつながり始めたのですが、それを加速させたのがUTF-8の表舞台への登場と、Instagram、TwitterなどSNSの台頭ですよね……。UTF-8はあまりSNSほど表沙汰されないように思いますが、「文字が文字化けせずに言語を越えて相互に乗り入れられる世界」はインターネットにとって衝撃だったと思います。あまりにも深く強い地殻変動で、あまり騒ぐ人はいないのですが、バベルの塔で幾千幾万に散らされた言葉たちが、再びつながりあったような衝撃でした。

アラビア人やパキスタン系のシンガポール人などともチャットできるし、アメリカにいる人、オーストラリアやハワイなど南半球にいる人たちともコミュニケーションができるようになってしまったのです。

ポカーンとしたまま、「うわー、すごい世界線に来ちゃった」と思っていたらGoogle翻訳など機械翻訳も登場しました。

ちなみにわたしはたまーに英語ができる人に勘違いされますが、中学1年の2学期の英語の小テストで0点を取って以来、英語コワい病にかかっています。スピーキングできませんし、英語は本当にわかりません。英語こわい英語にがて英語きらい……がくがくぶるぶる。

ただ、URLだけは読める人だったのですね。英語は読めないけれどURLは読める。あと日本語ちょっと読み書きできる。

URLを読んでいたら、どうした勢いか、2015年くらいかな、聖書を読むためのアプリがボランティアを募集していて、募集とか何もかも英語だったのですが、何だかいろいろあれこれしていましたらボランティアメンバーに参加できてしまっていました。だって、インターネットが出てくるはるか前から、聖書って書・章・節が整っていて、言葉たちにuniform resource locator が与えられているのですよ。さまざまな訳の聖書がありますが、言語が違っても底本が同じ聖書ならば、書・章・節を示すことで言語を越境して同じテキストを読めるのです。何と美しい書物ではないですか。最もインターネットに存在すべき書物ですし、インターネットのURLととても親和性の高い書物、これ以上のものはありません。

このボランティアでのローカライズは聖書本文そのものを翻訳するのではなく、アプリのインターフェースや各種通知、また聖書を毎日読むことを支援する読書プランという読み物の翻訳がおもな翻訳対象です。また、それらの翻訳した日本語が正しく日本語で表示されているかどうかなどの確認テストをβ版で行います。私はボランティアを始めた当初、しばらくはAndroid版などの日本語表示確認を手伝っていました。(うん、そこですごくたくさんバグだしして、「アメリカ人は何と適当にリリースするのだ…」とあぜんとしたというか、アジャイル開発の激風にも真正面からあおられましたね)。

そうこうしていたら初代の日本語ローカライズチームのチームリーダさんから「えーと、私は引退しますのでITが得意なshinoさん、引き継げますか?」と打診されました。「え?私? 何ゆえ? 英語できませんよ?」と言い、一度は辞退したのですが、あれがこれがそうなってどうなったか三代目のリーダーとして2019年2月に立てられてしまいました。神さまってそういうことする人なのですよね……(遠い目)。

いやぁ……。それから気が付いたら5年ですよ。よくやってんなぁ、と、思います。毎朝目が覚めるたびにやってくる翻訳依頼の数・数・数。それをメンバーにアサインしたり、翻訳したり、校正したり、承認したり、なんだりかんだり。人付き合いも苦手な人間なのですけれど、私、よくやってんなぁ(しかも無償ですよ)、しかし、すべてすべて、私自身が成したことではなくて、あの方が成されていることなのですよね。ああ、びっくり。

アメリカ人はやはりアメリカ人で「量が質を生む」という哲学ですし(日本語はそんなに早く翻訳できません!! とかなりプロテストしています……)、ドイツ人はやはりドイツ人でめちゃくちゃ生真面目で宗教改革と印刷革命を起こした国の人ですし、華僑は華僑でどんな国に移住していても愛すべき隣人ですし、ついでに言うなら中国語はマルチバイト文字の苦楽を共にする仲だしやはり日本語は漢語の傍流なのだと思います。また、この日本語ローカライズチームのコーチは南アフリカ共和国の方です。うーん、グローバル!

そして、日本人も何だか思う以上に日本国外で暮らしている日本人多いもんですね! 親に連れられて移住して心の言葉は英語ですけれど日本語にも興味がありますという人や、日本から離れて30年以上もたっていますという人、ご主人が外国の方で日常会話も英語だけれど日本語に渇いていてこのアプリを通して日本語にふれられることに喜びをもって関わってくれている人もいます。もはや日本国籍を捨てて自由な国の人になっている人の多いこと! そうしたみなさんとコラボレーションをしていて、心の言葉は日本語なので日本語でしゃべってくれますが、ぎゃー、私、英語コワイ!!! いや、おそれるな……。

また一方で、海外から来て日本在住の家庭が日本語ネイティブではない日本人もとてもとても多いことに気が付かされました。そうした方々へ届くことばも模索しています。

このインターネットを介した、怒とうの人との出会いつながりを何と語ればよいのか私は知りませんが、ベスト・オブ・2023、神さま、今年も私を用いてくださってこのローカライズの奉仕に携わらせてくださってありがとうございます。心を種としてうまれはぐくまれ、心象のはいいろはがねのひかりの底から、砕ける雲の眼路(めぢ)をつっきり、天の海の青空へといちめんのいちめんのあけびのつるのごとく伸び広がる、人の言葉の網であるインターネットに、神の言葉である聖書というくさびを打ち込んでくださりありがとうございます。

新たな空に息ついて、イエスさま、私はあなたを待ち望みます。待ち、望んでいます。2023年前も、昨日も、今日も、明日も変わらず。もう一度来られる、この世を照らすまことの光。もう一度、世にこられる、はじめにあった言(ことば)を。

Seeking God every day.